DYNACO ST-70 の修理と考察(1)

この度知り合いの喫茶店のご主人からアンプの修理を依頼されることになってしまった。ある所でたまたまお見かけした時に先方からわざわざ私に相談されたということで相当困っておられたのでしょう。

そのお店は先代のご主人が自分でオーディオシステムを作り上げ、オールホーンのスピーカーをマルチチャンネルで鳴らしておられました。その方は全国のオーディオで著名な店や個人宅を訪問して、その音を聴かせてもらい、その結果として自分の納得のいくシステムとして、4帯域に分割されたオールホーンシステムを真空管アンプで駆動するというものに辿り着かれたそうです。アンプやスピーカー、プレーヤーすべてにわたって無駄なお金は掛けないで最大限のよい音を出す方法を工夫されていました。その最たるものが喫茶店の建物自体の設計や建築、コンクリートホーンの製作を全部自分でやられました。その情熱とエネルギーには敬服します。スピーカーシステムを駆動するメインアンプにもご主人なりの合理性と工夫が見られます。というのもコストパフォーマンスとメンテナンスのし易さを考慮してすべての帯域をDYNACO ST-70にされました。つまり4台のST-70ですから真空管の予備を用意するのも簡単です。7199と6CA7、5AR4を用意すればよいわけです。プリとチャンネルデバイダーにはマツオサウンドのものを使われていました。その音は本当に心地よくいつまでも聴いていたいものでした。

最初にその喫茶店を訪れてからすでに40年が過ぎ先代のご主人も亡くなられ、システムも時の流れには抗えない部分があります。特に発熱するアンプは部品が劣化します。DYNACO ST-70も例外ではありません。先代のご主人が予備のものを用意し不調なものとすぐに交換するということで数が増えていったのでしょうか、全部で11台のST-70を所有されています。ところがその中で調子のよい物を使いまわして鳴らし続けていくのも限界が来たようで、相談を受けたときには、まともに稼動するものが2台しかないという状態でした。

相談の結果、取りあえず5台のST-70(そのうち1台は明らかに部品を取りはずしてあるジャンク品でした。私も部品取り用に考えていました。)を預かることになりました。うまくいけば4台の使用可能なST-70が再生できるかと考えていたのです

が、2台(そのうち1台はジャンク品)は電源トランスが断線、内部ショートで再生不可能となりました。残りの3台について取りあえずコンデンサーが劣化していると判断して電源のブロックコンデンサーの容量をチェックしてみましたが3台とも容量抜けがひどくまったく使い物にならない状態でした。ブロックコンデンサーはアメリカ製のアンプによく使われているツイストロックタイプのケース(マイナス側)が直接シャーシーにアースされるタイプでどこにでも置いてあるというものではないのですが、いつもお世話になっているショップでドイツのF&T社のものを入手し交換しました。それだけでは現代のレストアとしては物足りないので7199の電源のみFETリップルフィルターを挿入してよりハム・ノイズの低減を試みました。念のために残りの

コンデンサーもBLACK CATはASCのフィルムコンデンサーに、後のコンデンサーはディップマイカに取り替えることにしました。作られてから数十年が経っているST-70のプリント基板はパターンが剥がれ易く、コンデンサーを取り外すのは細心の注意が要ります。取り外したBLACK CATの絶縁抵抗を測定してみたところすべての個体で2000MΩをクリアしました。意外に絶縁が劣化していないので3台目のアンプはASCに交換せずにASCに交換したアンプと音質を比較してみました。さてその結果は中域に独特の分厚さや押し出しの強さを感じる反面、何か高域で濁りや抜けの悪さを感じました。どちらを選ぶかは明白です。すぐにBLACK CATをASCに交換しました。また3台のうち1台はバイアス電源の電解コンデンサーも容量抜けが起きていて規定の-電圧が出ない状態でした。これでは出力管に過大な電流が流れてトラブルになるでしょう。あわててこの電解コンデンサーも交換しました。

ST-70に使用している真空管では6CA7、5AR4は現在もロシア、東欧。中国で生産されており、入手は簡単です。しかし7199はロシアの1社でのみ生産されており、なおかつそれも余り評判がよくないようです。ネット上ではその解決策として6GH8(6U8、ECF82等も同等)を使う方法等が紹介されているのですが、パターンを変更してやる必要があり、ちょっとやりにくさを感じます。この問題をうまくクリアーするのがソケットコンバーターというものでeBayあたりで探すと簡単に見つかると思います。このコンバーターでECF82を使った時の音質の変化を確認してみました。一方は何十年間使用した7199、他方は新品のECF82なの

で比較すること自体がナンセンスかもわからないですが、音質はコンバーターを付けたECF82の方が好ましいと感じました。ただノイズ等に敏感なのか手を近づけただけでかなり大きなノイズを拾いますので注意が必要なようです。

カテゴリー: Mainamp パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください